大人気ないひと   匿名希望A様




*このお話はR18要素を含むため、18才未満(高校生をふくむ)方の閲覧を禁じています。
この注意書きを無視した際のトラブル等には当方は関与しませんので、ご了承ください。



 街中で、それも人通りがそれなりにある中で。
 ひとりの赤毛の正面に、金髪の青年に引っ付いた赤毛の姿があった。
 ぎゅうとガイのシャツの袖を握り締めたルークは、目の前にいる己の被験者をこれでもかといわんばかりに睨みつけていた。だが相手は素知らぬ顔で佇んでいる。それが余計にルークの憤りを煽ると知りながら。ぎり、と歯軋りすらするルークにガイは困ったように眉尻を下げて笑う。
 事の発端を思い返せば、いつものくだらない言い争いがきっかけだったのだが、今回に限っていつもとは少々違った展開を迎えていた。
 普段なら最終的に拗ねたルークにアッシュが折れて妥協するのだったが。
 今は無言でガイを睥睨し、その翡翠の双眸が冷たい光を放っていた。
 原因はガイに密着しているルークであることは明らかだった。
 しかし元凶であるルークは気付きもしないまま、さらにぎゅうううとガイにしがみ付く。アッシュの柳眉がぴくと動いて眉間のしわがより深く刻まれる。
 いよいよ逃げ出したくなったガイが口を開こうとした矢先、アッシュが声を発した。

「勝手にいつまでもそうしていればいい」
「ふんっ、お前にいわれなくてもしてるっつーの!」
「あ〜ぁ…」

 やがてアッシュの後姿が見えなくなり、ルークがガイから離れた。ルークにしがみ付かれて悪い気はしていなかったが、真正面からアッシュの殺気にも似た敵意をひしひしと受けていたガイは複雑だと胸中でぼやく。その一方で、清々したーといいながらもルークは何処か曇った表情を浮かべていた。

「…謝らなくていいのか?」
「っんで!俺が、アイツに謝らなきゃなんねえんだよっ!」
「いつもはアッシュが折れてくれてるんだから、たまにはお前からも妥協してみたらどうだ?」
「……ヤだ」
「ヤだって、お前ね」

 ぷいとそっぽを向くルークにガイは苦笑する。しかしそれ以上突っ込んだことをいわずにガイはルークにただひとこと、宿に戻ろうといった。



*     *     *




 夕食を済ませ、早々に部屋に引っ込んだルークはベッドに倒れこんでしとしとと雨が降り出した外をぼんやりと眺めていた。室内は音素灯をつけていないので窓から漏れてくる街灯の明かりによって薄暗い。
 この視界を真っ暗闇に埋め尽くすか否かの雰囲気がルークは好きだった。
 ひとりでいると心細くはなるが、微かに視界に映る風景が自分がまだここに生きているということを教えてくれているような気がして、安心できた。
 アニス辺りにこんなことをいえば、自虐的だといわれるかもしれない。だがルークは本当にこの薄闇が好きだったのだ。
 そして何より。薄闇に浮かび上がる大好きな赤色が鮮やかに視界に映るから。 
 ふっと目を閉じて昼間のことを思い出して自己嫌悪に陥り、ぐりぐりと枕に顔を押し付ける。
 ガイのいうように、今回は自分から謝ってみようか。
 そんなことを考え出した時だった。

 コツン

「…ん?」

 コツ、コツン 

 耳慣れぬ音にルークは上半身を持ち上げて室内を見渡す。しかし音の発信源らしきものは見当たらない。首を傾げもう一度布団に突っ伏そうとして、やっと気が付いた。

「あ、窓か…」

 素足のまま窓辺に近付いて窓を開け放つ。降り注ぐ雨に僅かに眼を眇め、下を見た。

「…あ、あっ…しゅ?」 

 雨の中、雨避けを身に着けていないアッシュが宿の前に立っていた。
 いつも上げている前髪が、雨水を滴らせてアッシュの顔に張り付いている。いったいどれほどの長い間雨に降られていたのだろう。

「おま、え…なにしてんだよそんなとこで!風邪引く…って、おいアッシュ!」

 ルークの台詞をみなまで訊かずにアッシュが踵を返して歩き出した。慌てたルークは咄嗟に窓枠に足をかけてそこから身を躍らせていた。
 パシャン、と水飛沫を上げて難なく地面へ着地する。素足に触れる水が冷たかった。

「おい、アッシュ…!」
「黙れ」
「…っ」

 短く制され、ルークはぐっと押し黙る。アッシュは黙々と歩を進めていく。ルークは仕方なく黙ってアッシュのあとを追うことにした。





 辿り着いた先は、廃れた小屋だった。
 いったいこんな所にアッシュは何の用があるのだろうか。一度足を止めたルークは首を捻る。相変わらずアッシュはルークを気にかけることなくさっさと小屋に入ってしまう。いい加減ルークも雨水に濡れそぼっていたので雨を凌げることに越したことはない。
 そう思い、小走りで小屋に入ると突然、横合いから腕が伸びてきてルークの喉を捕らえた。

「?!かっ、…!」

 喉を押さえられ呼吸が詰まったルークの身体が容赦なく壁に叩きつけられ、さらに呼吸が止まる。
 痛みと呼吸困難に顔を歪めるルークに、アッシュの冷淡な声が突き刺さった。

「痛いか、レプリカ」
「……、いた、いに決まっ…てんだ、ろ」

 げほっと咳き込みながら途切れ途切れにルークが応える。もう一度咳き込んで大きく一息ついたルークの唇に、柔らかなものが触れた。
 なんだ、と思うよりも先に触れていたものから割り込むように生暖かいものがルークの口腔内に進入してきて中を蹂躙する。驚いて逃れるように引っ込むルークの舌を巧みに捉えて絡み付いてくるそれが、とアッシュの舌なのだとやっと認識した。

「ふぅ…ん…」

 鼻に掛かったような吐息と密着した唇の合間から漏れる水音にルークは混乱する。
 なぜ、急に。
 やがて喉を押さえつけていたアッシュの腕が下へと伸びていく。相手の目的が掴めないルークはされるがままになるだけだった。

「…?!…あっ…」

 するり、と剥き出しの腹を撫で上げられルークはびくりと震えた。いつの間にグローブを外したのだろう、アッシュのひんやりとした素手がゆっくりとわき腹を撫で、インナーの中に滑り込んできた。そこで漸く抵抗しようとして腕を持ち上げたところで、それはアッシュの手によって頭上に縫いとめられて動きを封じられてしまった。拘束から逃れようともがけば掴まれた手首に指が食い込むほどに戒めが強くなる。
 そうこうしているうちに、インナーの中に入り込んできていた指がルークの胸の飾りに触れて、ルークが小さく声を上げた。羞恥に堪えかねてルークが顔を伏せると、アッシュが耳元で吐息が掛かるほどの距離で話しかけてくる。

「どうした、レプリカ」
「っ…!」

 耳の軟骨を甘噛みされ、ルークが肩を竦ませるとアッシュはくっと喉の奥で笑い反応を楽しんでいるようだった。それが恨めしくて、つい上目遣いに睨むとアッシュが再び唇を重ねてきた。まるで噛みつくようなキスに、相変わらずルークは翻弄されるだけで抵抗も出来ない。

「あ、…はぁ……っ、ん…」

 長い口付けから解放され、喘ぐようにルークが息を吸い込んでるのにも構わずアッシュは頭をずらしてルークの首筋に唇を寄せる。
 鎖骨から首筋をゆっくりと舐め上げ、襟で隠れるか隠れないかぐらいの場所に赤い印を残す。綺麗に色づいた箇所をもう一度舐めて一旦止めていた手を下に持っていく。
 顔を紅潮させて荒い息を吐くルークにアッシュは目を細めて口端をつぃと持ち上げる。

「いっ?!あ、なに、…あ、……っ、ちょ、…あ、しゅ…」

 下半身にアッシュの手が触れるとルークが大袈裟なくらいに身体を震わせた。手から逃れるように後ろに引いた腰へ腕を回してぐいとアッシュは自分の強引に抱き寄せる。
 明らかな戸惑いと、そして若干の怯えを滲ませたみどりいろの大きな双眸がアッシュを見つめてくる。

「怖いか?」
「…そりゃ、怖いっていやあ、怖い、けど」
「そうか」

 なら、怖くないようにしてやる。いいながら、アッシュはルークのズボンのバックルを外しにかかった。ぎょっとしたルークが腕に力を込めて止めろだの喚きはじめる。騒ぐルークに鬱陶しいと眉をひそめて舌打ちし、アッシュはふと見下ろした先にあった縄を拾い上げ、それを使ってルークの両手首を背中の後ろで縛る。そうするとさらに抗議の声が大きくなったが、お構い無しにアッシュはルークのズボンを下穿きごとずりおろした。

「……っ!」

 ルークが息を呑む。壁とアッシュに挟まれて思うように身動きできないルークは、恥ずかしくて曝されている箇所を隠したくても手は拘束されていて何も出来ない。出来ることといえば、か細い声でなんなんだよと呟くことしか出来なかった。
 俯いてしゃくりあげはじめたルークをちらりと一瞥したアッシュは無言で懐から小瓶を取り出し、中に入っていた液体を自身の指先に垂らした。 そしてその指をルークの秘所に持っていき、つぷりと指先を中にいれた。

「あっ…!なっ、……ぁ…」

 驚きに眼を見開いてルークが声を上げる。最初に発せられた声が、あまりにも艶を帯びていてアッシュは喉奥で笑う。
 指を付け根まで沈めると、一度引き抜き、液体で濡らして再び挿入する。
 何度かそれを繰り返したあとで、今度は指を二本に増やして中で動かす。入り口を押し広げるように、中を掻き混ぜるように動かせば、びくびくとルークが身体を震わせ艶かしい喘ぎを唇から零す。

「…や、ぁ…あ、しゅ……あ!」

 急にルークが一際大きな嬌声を上げた。アッシュはにやりと笑うと、反応を見せた箇所を執拗に攻め立てる。頬を朱に染めてかぶりを振りながら、それでも自ら腰を揺らめかせはじめた相手にどんどん加虐心が膨らんでくる。
 手にしていた小瓶をルークの口元に持っていき、喘いで口を開けたところへ中身を流し込む。口に含まされたものをそのままにルークが問うようにアッシュを見つめてくる。

「呑み込め」
「ん…ぅ……変な味…なんだよ、コレ…」

 指示通り嚥下したルークが顔をしかめる。アッシュは首筋に所有印を刻みながら、時期にわかるといって止めていた手の動きを再開させる。
 慣れない刺激にルークが嬌声を室内に響かせる。それにと共に卑猥な水音も大きくなる。

「?!あ、なに……ぃ、あ…」
「効いてきたようだな」
「はっ…、あ……」

 呆然と恍惚とが混ざり合った表情で喘ぐルークの様子を見たアッシュがルークのものに手を伸ばす。
 びくん、とルークが背を仰け反らせ口をパクつかせる。まるで酸素を求める魚のように喘ぐルークにキスをしながら、手を上下に動かしてルークのものを扱き上げる。次第に鈴口から蜜が溢れてきたのに気付いたアッシュは、ルークのものに沿うようにして人差し指でつぅと撫で上げ、

「っ、ぁ…、ん、あぁ…あああ…!」
「だいぶ濡れてきたな。感じてるのか?」
「ち、が…ああぁ、……、ぁん」

 意地悪く耳に息を吹き込むように問えば、ルークはぞくりと背筋が粟立つ感覚に陥ってふるふると小さく頭を振ることしか出来ない。
 否定したかった。ぞくぞくと駆け上がってくるこの感覚を認めたくなかった。
 なのにアッシュに触れられるたびに熱はどんどん上がって頭がおかしくなりそうだった。
 ずっと弄られていた秘所はすでに十分すぎるほど濡れそぼり、ルークのものは天を向いていた。
 欲情を煽るその姿にアッシュは暗い愉悦に笑みを深める。
 顔を紅くし、縋るように瞳を向けてくるルークにアッシュは冷たい視線を返すだけで、ルークを完全な快楽へと落すことはしなかった。 
 自身を取り出し、痴態を見て緩く頭を擡げはじめていた先端をルークの秘所にあてがう。
 今までにない恐怖を前面に押し出したルークに、アッシュはひとこと力を抜いてろという。

「…!!!ああああああ…!」
「くっ、…力を、抜け…!」
「あぁ、い、…たぁ、あ、…あ、しゅ…む、り……あぁっ!」

 挿入された圧迫感にルークが顔を歪めて悲鳴を上げる。しかしアッシュはそのまま押し進めルークの中へ進入を果たす。
 ルークはあまりの衝撃に眼を見開いて涙を流していた。膝はがくがくと震え、今にも崩れ落ちそうになりながら、それでもアッシュに支えられているために不安定な立ち姿勢を保っている。未だに背中で纏め上げられていた手首の痛みなどどこかに吹き飛んでいて。ルークの思考を支配していたのは、下半身の耐え難い苦痛と言い知れぬ感覚だけだった。

「……動くぞ」
「はぁ、ん……あ、あああぁ…」

 アッシュが腰を動かせば、ルークから聞えてくるのは苦痛を超えた快楽に喘ぐ声だった。
 髪を振り乱し、両の目からは涙を溢れさせ嬌声を上げるルークに、律動を繰り返すアッシュも限界へと追い上げられる。
 絶頂が近くなり、ルークの啼き声が一際大きくなる。
 ルークが熱を弾けかけさせたその瞬間、アッシュはルークのものの根元を指で戒めた。びくっ、とルークのものが大きく振るえ、次いでルークが愕然とした声を漏らす。
 アッシュは正面からルークの顔を見つめ、常にない柔らかな、優しく甘さを含んだ声音で告げた。

「そう簡単にイかせやしねえよ」

 それはルークにとって死刑宣告にも誓い言葉だった。



END



匿名希望Aさまよりいただきました、アシュルクエロ話です。
うああ、ありがとうございます!! これが精一杯とおっしゃってましたが、十分素敵ですよ。大人気なく独占欲の強いアッシュがまたたまらなくて。
しかも媚薬ネタ…! 本当に色っぽいお話をありがとうございました。大変美味しくいただかせていただきましたv