4696//さんのりんこさんからお誕生日にいただきました。
ユーリ+ルークのWにゃんこ! りんこさんからルークをいただけるなんて、予想外の嬉しさにものすごい浮かれていました。
もうもう、二匹とも撫でくりまわしたいくらいに可愛いです!! しかもそれぞれ鈴のついている位置がまた絶妙! 保護者の独占欲丸出しのリボンの色も素敵です〜!
本当に素敵なイラストをありがとうございました!
でもって、下記はイラストにあわせて小話を書かせていただきました。お返しになるかどうかは謎ですが〜。



朝食を終えて外に出ると、ユーリは長い尻尾を機嫌よさげに振りながら城の方向へ向かって走りはじめた。
今朝は天気もよくて、走るユーリの背中を温かい陽射しが温めてくれる。朝食に食べたホットケーキも上手く焼けたし、なんだか今日は良い日になりそうな気がする。
元気よく道を走って行くユーリの姿に、すれ違う人々はちょっと驚いた顔になってからすぐに瞳を和ませる。
小柄な身体に長い黒髪をそのまま縛らずに降ろしているユーリは、ちょっと見ないほど可愛らしい顔をしている。だが人々が軟らかな表情になるのは、それだけが原因ではない。彼の頭の上にある、髪と同じ色をした艶々とした三角形の耳と、長い尻尾のせいだ。
ユーリは耳族といわれる、亜人族の子供だ。耳族はそれぞれ固有の獣状の耳と尻尾を持つ以外はほとんど人間と変わらず、人権もクリティア族と同じように認められている。
ただその個体数がすくないため、ほとんどの者達は貴族や裕福な人間たちの間で保護されている。
ユーリも、今をときめく若き騎士団長に引き取られて暮らしている耳族だ。最初は引き取られることを渋っていたユーリだったが、保護者となるフレンと対面してからは進んで彼のところに身を寄せている。
今ではすっかりここでの生活にも慣れ、ユーリにとってフレンは、保護者であり家族でありそして大切な友人となっている。



ユーリは城のすぐ近くまでやってくると、そのすぐ近くにある大きな貴族の屋敷の塀を曲がって裏に回った。そして長い塀にそって走って行くと、ユーリはきょろきょろと辺りを見回してから身軽に塀の上に飛び乗った。
音を立てないように中に降り立つと、そこは鬱蒼と木の生い茂った屋敷の裏庭だった。そこを勝手知ったる様子でユーリは走って行き、ちょうど森の切れるあたりで足をとめて木の後から様子を伺う。
そして、そこから少し離れた場所に目的の相手を見つけると、ユーリは茂みの中から出ていった。

「あ、ユーリ!」

ユーリがわざと立てた音に気がついたのか、ぴこんと赤い耳を立てて相手がふり向く。年の頃はユーリよりもちょっと下くらい。ユーリと同じように三角形の耳と長い尻尾を持ち、鮮やかな赤い髪をしたその少年の名を、ルークという。ユーリの、もう一人の大切な友人だ。
ルークは長い尻尾を振りながら嬉しそうにユーリの方に走ってくると、そのまま抱きついてきた。

「久しぶりだな!」
「そうか?」
「そーだよ! 先週は全然来なかっただろ」

ぷくりと頬をふくらませたルークに、そういえばそうだったかと首を傾げかけて、ユーリはああという顔になった。

「先週は、フレンが休暇取っていたんだよ。だから久しぶりに一緒に出かけたりしてたからな」
「……いいな、お休み」

ぱたぱたとせわしなく動いていたルークの尻尾が、へにゃりと力なく垂れる。それを見てユーリは、自分がなにか地雷を踏んだことを素早く察知する。

「なんだ、どうした?」
「アッシュもお休み、取らないかな……」

しおしおと沈んだ調子でそう呟くルークに、ユーリはルークの保護者である赤い髪の青年を思い出していた。
アッシュは貴族的な容姿とあまり感情を見せないところがややすると冷たくも見えるが、ルークを溺愛していることはユーリから見てもたしかだ。
だが、アッシュはこのファブレ公爵家の嫡子だ。
しかもファブレ公爵家は王族につらなる一族で、そのためアッシュも成人するよりも前から様々な公務に携わり、多忙の身である。
しかしそれはフレンも同じだ。
若くして騎士団の頂点に立っている彼も、ヘタをすると何日も家に戻ってこないことがある。しかもこの屋敷のように使用人がいるわけでもないから、その間ユーリは一人で放っておかれていることになる。
状況だけを比べればユーリの方がずっと寂しい思いをしていることになるが、そのことをあげつらう気はない。
ルークはユーリよりも幼いし、気性的にも甘えん坊なところがある。それに、ユーリもわかるのだ。自分の保護者と決めた相手でないと、ダメなことが。

「ンなしけた顔してんじゃねえよ。アッシュに心配はかけたくねえんだろ」
「うん……」

こくんと小さな頭が頷くのを見て、ユーリは笑みを浮かべた。
単に甘えるだけの子供なら、ユーリだって相手なんかしない。こういう素直で一生懸命なところが気に入っているのだ。

「ま、代わりにはならねえかもしれねえけど、俺で我慢しておくんだな」
「そんなことねーよ! ユーリは大事な友達だし!」

慌ててぷるぷると首を振るルークの動きにあわせて、首に赤いリボンでつけられた鈴が鳴る。その軽やかな音に、ふとユーリは自分の左手に着いている青いリボンに目をやった。
保護者のいる耳族には、かならず所有をしめす印がつけられる。この青いリボンはフレンがユーリのために選んでくれた物で、聞いたことはないがルークの赤いリボンもそうなのだろう。

「なっ、今日は何して遊ぶ?」
「ルークがしたいことでいいよ」

「そういや、なんで何時も裏庭から来るんだよ。ユーリなら普通に表から入れるのに」
「めんどくせーからな」

じゃれついてくる自分よりも小さな同族の少年の頭を撫でてやると、ぱあっとお日さまのような笑みが浮かぶ。
その笑みを見て、ユーリはどうして自分がこの少年を気に入っているのか何となくわかったような気がした。
同じように笑う人間を、ユーリはよく知っている。結局、基本的に自分はこういう笑顔を持っている相手に弱いのかもしれない。

「ユーリ?」

じっと見ていることに気がついたのか、きょとんと不思議そうに目を丸くしながらルークが見あげてくる。それになんでもないと言って笑ってみせると、にこりと可愛らしい笑みが返ってくる。
素直に守ってやりたいと思わせるその笑みに、ユーリは手をさしだした。ルークの新緑色の瞳が嬉しそうに輝き、ユーリの手を握る。
その顔は、さきほどのしおれた花のような様子とは違って、明るく輝いている。
やっぱり今日は良い日になりそうだ。
そんなことを思いながら、ユーリは大事な友達の手を優しく握りかえしたのだった。