苦手?(G*L)
じっとなにかを問いたげに見つめてくる視線に気づいて声をかけると、ルークは小さく首を横に倒しながら口を開いた。
「なあ、ガイは俺のこと好きか?」
いったいどこでそんな仕草と問いかけのコンボを覚えてきたのだろう、とまず最初にガイは心の中で呻いた。
少なくとも自分は教えた覚えはない。
しかしどこで覚えてくるのか、たまにルークはガイの理性をぎりぎりで試すような言動をしてくれることがある。たぶん今も、ルークは無意識にそうしているだけなのだとわかっている。
「もちろん、好きだよ」
それでも蕩けるような笑みと声で答えることだけは、忘れない。
それは本当のことだから。
だから誰はばかることなく、言葉にできる。
「……そか」
いやに真剣な顔で頷くルークに、ガイはおやと軽く瞠目する。宿の部屋で二人きりとはいえ、いつもならそう言うことをさらりと口にする自分に、この子供はたいてい顔を真っ赤にさせて照れ隠しに文句をつけてくるのに。
「おまえ、どうかしたのか?」
向かいのベッドに座るルークの方へ思わず身をのりだしかけると、それを片手で制するようにしてからルークがさらに続けてきた。
「じゃあさ……どれくらいって聞いても良い?」
「……そりゃ」
誰よりも大切で愛しくて、すべてから守ってやりたくて。
それこそこの世界よりもずっと大切なのだと、そう口にしかけてガイはふと思い直して開きかけていた口を閉じた。
「ガイ……?」
突然黙ったまま立ちあがったガイに、ルークは問いかけるようなそれでいてどこかにかすかな不安を滲ませた目で見上げてくる。
それににこりと笑い返すと、ガイはそのままベッドに座るルークを上から包み込むようにして抱きしめた。
「……っ!」
反射的にびくりと震えた体を、きつく抱きしめる。
目のすぐ下にあるつむじにそっと口づけ、後ろ頭にまわした手で愛おしげに髪を撫でる。
「なっ……!んだよっ」
「これが、俺の答えだよ」
その言葉と共にもう一度強く抱きしめ、そっと背を撫でる。そうしてやると、はじめは強ばっていた体から徐々に力が抜けてゆくのがわかる。
子供をあやすように軽く背をたたいてやると、赤い頭がおそるおそるすり寄ってくるのがわかった。
きゅっ、とすがるようにルークの指がガイの服をつかむ。
その、どこか遠慮がちな仕草に苦笑しながらも、ガイはやわらかな手つきでルークの背をなで続けた。
ようやくガイが腕の力を緩めると、一瞬だけ名残惜しそうにルークの指が動いた。
なだめるように最後に軽く額にキスを落としてやると、ほっとした顔になった。
しかしそのすぐ後に、はたと気がついたように盛大にむくれた顔になってしまったのだが。
「んだよお前!これじゃあ答えになってないっつーの!」
「なんでだ?これ以上ないほどちゃんとした答えになっていただろ?」
そう言い切ったガイに、ルークの眉間に皺が刻まれる。しかし、どこぞの同位体とは似てもにつかない。もっともそれは、ガイの恋の欲目というものも多分にありはしたけれど。
「誤魔化すんじゃねーよ!」
「人聞きの悪いことを言うな。だから今のが答えだって言っているだろう……?」
抱きしめることでしか伝わらない思いもあるのだと。そうしれっと言い切ったガイに、ルークは一瞬あっけにとられた顔になってから、深々とため息を一つもらした。
しかしそうやって呆れてそらされた顔は見えなかったけれど、こちらに向けられた耳が赤いのはガイからもよく見えた。
言葉にすることは簡単だけれど、それはなにかが違うとわかっているから。
触れあう体とぬくもりで、思いを語る。
でも本当は、それでも足りない。
そらされた顔の陰でルークが小さく『天然め』と呟いていたことを、ガイは知らない。
END(07/03/25)
「なあ、ガイは俺のこと好きか?」
いったいどこでそんな仕草と問いかけのコンボを覚えてきたのだろう、とまず最初にガイは心の中で呻いた。
少なくとも自分は教えた覚えはない。
しかしどこで覚えてくるのか、たまにルークはガイの理性をぎりぎりで試すような言動をしてくれることがある。たぶん今も、ルークは無意識にそうしているだけなのだとわかっている。
「もちろん、好きだよ」
それでも蕩けるような笑みと声で答えることだけは、忘れない。
それは本当のことだから。
だから誰はばかることなく、言葉にできる。
「……そか」
いやに真剣な顔で頷くルークに、ガイはおやと軽く瞠目する。宿の部屋で二人きりとはいえ、いつもならそう言うことをさらりと口にする自分に、この子供はたいてい顔を真っ赤にさせて照れ隠しに文句をつけてくるのに。
「おまえ、どうかしたのか?」
向かいのベッドに座るルークの方へ思わず身をのりだしかけると、それを片手で制するようにしてからルークがさらに続けてきた。
「じゃあさ……どれくらいって聞いても良い?」
「……そりゃ」
誰よりも大切で愛しくて、すべてから守ってやりたくて。
それこそこの世界よりもずっと大切なのだと、そう口にしかけてガイはふと思い直して開きかけていた口を閉じた。
「ガイ……?」
突然黙ったまま立ちあがったガイに、ルークは問いかけるようなそれでいてどこかにかすかな不安を滲ませた目で見上げてくる。
それににこりと笑い返すと、ガイはそのままベッドに座るルークを上から包み込むようにして抱きしめた。
「……っ!」
反射的にびくりと震えた体を、きつく抱きしめる。
目のすぐ下にあるつむじにそっと口づけ、後ろ頭にまわした手で愛おしげに髪を撫でる。
「なっ……!んだよっ」
「これが、俺の答えだよ」
その言葉と共にもう一度強く抱きしめ、そっと背を撫でる。そうしてやると、はじめは強ばっていた体から徐々に力が抜けてゆくのがわかる。
子供をあやすように軽く背をたたいてやると、赤い頭がおそるおそるすり寄ってくるのがわかった。
きゅっ、とすがるようにルークの指がガイの服をつかむ。
その、どこか遠慮がちな仕草に苦笑しながらも、ガイはやわらかな手つきでルークの背をなで続けた。
ようやくガイが腕の力を緩めると、一瞬だけ名残惜しそうにルークの指が動いた。
なだめるように最後に軽く額にキスを落としてやると、ほっとした顔になった。
しかしそのすぐ後に、はたと気がついたように盛大にむくれた顔になってしまったのだが。
「んだよお前!これじゃあ答えになってないっつーの!」
「なんでだ?これ以上ないほどちゃんとした答えになっていただろ?」
そう言い切ったガイに、ルークの眉間に皺が刻まれる。しかし、どこぞの同位体とは似てもにつかない。もっともそれは、ガイの恋の欲目というものも多分にありはしたけれど。
「誤魔化すんじゃねーよ!」
「人聞きの悪いことを言うな。だから今のが答えだって言っているだろう……?」
抱きしめることでしか伝わらない思いもあるのだと。そうしれっと言い切ったガイに、ルークは一瞬あっけにとられた顔になってから、深々とため息を一つもらした。
しかしそうやって呆れてそらされた顔は見えなかったけれど、こちらに向けられた耳が赤いのはガイからもよく見えた。
言葉にすることは簡単だけれど、それはなにかが違うとわかっているから。
触れあう体とぬくもりで、思いを語る。
でも本当は、それでも足りない。
そらされた顔の陰でルークが小さく『天然め』と呟いていたことを、ガイは知らない。
END(07/03/25)