蝶の足枷




内容が痛々しいのでいっそのことタイトルも痛々しくということで、時代考証その他丸無視の和物系っぽいエロ話です。
大したことはしていませんが、一応女性向けにはなるので気持ちR15くらいの気分で。時代考証背景その他は、深く考えないでいただけると嬉しいです。

無理矢理設定を打ち出すなら、双子の一人を家の守り神とするために土蔵に閉じこめるか何かする旧家という設定。ルークはずっと土蔵の中だけで生きていて、外に出してもらえない。一応神様という扱いだから、そこから出してもらえない。
そこに入れるのは当主と跡取りだけなので、アッシュは出入り自由。本当は外に出してあげるはずだったのに、結局はルークを自分の物にして、さらにずっと閉じこめるという悪循環に…。
わかりやすく想像してもらうなら、昔の横溝映画を思い浮かべていただくのが一番いいかな。上手く伝えられる文章力がないのが悔しいですが。
つか、延々と言い訳しているのは自分でもちょっと恥ずかしいからorz。
でもこういうのもたまには書きたくなります。
でもって、半端にはじまって終わっている話なので、小話に混ぜてみました。言い訳が長くてすみません…。




■□■




薄暗い土蔵には、秘密が眠っている気配がある。
何か人の目から隠したいもの、秘密にしておきたい物がそこには閉じこめられている。



「イイ恰好だな、ルーク」
低く嘲るような笑い声とともに呟かれた言葉に、可愛らしい鈴の音が答える。
赤い組紐に通された、金色の二つの鈴。鈴のついたその紐は、梁から垂らされた複雑に絡み合う極彩色の布紐の一つに結びつけられ、風もないのに時折ちりりと小さな音を立てていた。
その幾重にも絡み合った布紐の先には、白い手首が一つにまとめて縛り上げられていた。結び目を作った後の紐の先端は、その手首から続く白い腕に絡みつくようにして垂れ下がっている。
そしてそのさらに先には、一幅のあぶな絵にも似た艶やかで淫靡な姿があった。
白絹の襦袢の片袖を抜かれ、足を広げて座れるように大きく裾を捌かれた恰好で縛り上げられている一人の少年。それは、思わずそちらの趣味がない同性でも誘い込まれてしまいそうなくらいに、官能的な光景であった。



「……ア…シュ、な…んでっ……」
縛り上げられているルークと呼ばれた少年は、真っ赤に泣き腫らした目で、自分の前であぐらをかいて座っている青年の名を呼んだ。
アッシュと呼ばれた彼はその声に唇の端に薄く笑みを刻むと、舐めるようにルークの全身を見回した。
「てめえは、こうされるのが好きなんだろう? もうここから漏れたもので、床が湿っているじゃねえか」
アッシュはルークの足の間の下にある床に視線を向けると、クッと小さく笑い声を漏らした。
黒光りする板張りの床は、ルークの真下のあたりだけ小さな水たまりができはじめている。濁った白が混じったその色は、床の色が暗いだけにイヤでも目についた。


「……だっ…て……」
その言葉に何かを感じたかのように、ひくりとルークの体が震えた。そして、それに呼応するように小さく鈴が鳴る。
「ああ、そうだったな……」
アッシュは急に思い出したように優しげな声を出すと、そっとルークの足の間に手を伸ばした。
「さっきちょっといじってやったら、我慢できなかったんだったな。直に触れたわけでもねえのに」
アッシュの指が、ルークのものをゆるく包むようにして足の間に通されている紐の結び目を弾く。
「……ン、んんっ!」
身もだえるようにつま先が床を蹴り、その動きにつられるようにますます裾が乱れて白い腿がむき出しになる。
「なんだ、こんなモノで感じるのか? ここを締め付けているわけでもねえし、何もねえ場所だろう?」
女であれば蜜のあふれる場所に緩く食い込んだそれは、紐が柔らかな素材で出来ているために強い刺激こそないが、ルーク自身の体重で鈍い刺激を与えている。そこに結び目の部分を擦りつけるように悪戯をされれば、ただでさえアッシュに慣らされきった体は簡単に陥落する。



「だっ……て…」
頬を紅潮させて潤んだ瞳で見上げてくるルークの姿は、本人に自覚があるのかどうかさだかではないが、相手の嗜虐心を強くそそる。
もっと酷く責め立てて、泣いてそれに耐える姿を見たい。そして、最後は理性を突き破られて乱れる姿を見たいというどす黒い想いをかき立てる。
「なんだ? 言わなくちゃわからねえだろ?」
伸ばした指先でそっと頬を撫でてやると、何か熱いものに触れたときのようにびくりと滑稽なほどに震える。
頬から顎のラインにかけてくすぐるように指を滑らせ、顎の先をつと持ち上げてやると、まるでキスをねだるように薄く唇が開かれる。それに誘われるように口づけてやると、薄い唇が熱く震えているのがよくわかった。
唇を離し、触れるか触れないかぎりぎりのところまで体を寄せる。互いの熱と匂いが交差し、どこも触れていないのにまるで空気だけで抱き合っているような錯覚をおぼえる。
それはたぶんルークも同じなのだろう。頭の上でちりりと小さく鈴が鳴く。


「どうして欲しい? ルーク」
そっとまるで毒でも流しこむように、低く甘い声でアッシュはルークの耳元で囁いた。
「……わかって…る、くせに…」
微かな息の気配だけでも耐えられないのか、小さく身もだえるようにルークの体が震える。
「俺は、おまえの口から聞きたい。どうして欲しいんだ? ルーク」
優しい問いかけとともに、雫をこぼすルークの先端をアッシュが指先で撫でた。突然の刺激に大きく震えた動きに従うように、鈴が鳴る。
アッシュはルークのもので濡れた指を目の前にかざすと、ゆっくりと見せつけるように指を舐めた。骨張った長い指の上を、ちらちらと薄赤い舌がひらめくように踊る。
その仕草に何かを思い出させられるのか、ルークは耐えるようにぎゅっと強く目を瞑った。しかし彼の意識のすべてがアッシュに向けられているのが、気配だけでもわかった。

「ルーク」

あと少し。あともう少しで、堕ちてくる。
ルークの矜持は綺麗で堅いが、アッシュをそれをどうすれば蝶の羽根のように脆く踏みにじれるかを知っている。
もちろんそう躾けたのはアッシュ自身なのだが、この薄い羽根のような矜持が砕ける瞬間の綺麗な音を聞くのがアッシュは好きだった。
ほらもう少し。
震える唇が薄く開かれ、吐息のような声が漏れた。
そして小さな懇願の声は、鈴の音に混じってあえかな音色を奏でる。



「いい子だ……」
眼を細めながら猫を撫でるような手つきでそっと喉をくすぐってやると、ルークは本物の猫のように気持ちよさそうに目を閉じてアッシュの手に頬をすりつけてくる。その仕草に、ぞくりと粟立つような欲情が頭をもたげるのがわかった。
強くかき抱いた体に唇を押しつけると、小さな嬌声とともに鈴が鳴る。
その音色にかき立てられるように前を押し広げ、自由を奪われた体をひとつひとつ暴いてゆく。
自分以外誰も知らない、ルークの奥底に眠る綺麗で淫らな肢体を呼び起こさせるために。


それは、二人だけの秘密。




END
(08/03/10)