ムスコと!さんのいくじさんからお誕生日にいただきました。
猫耳ユーリ!!! しかも大人サイズのお色気ですよ! はあああああ、ありがとうございます!!
こんなフェロモンにゃんこでは、フレンも絶対に我慢できないと思います。ちゅーのかわりにフレンの頬を舐めればいいと思います! …って、落ち着こう自分。
ちなみにいただいたときにケーキも猫耳でお揃いだわと思っていたら、偶然だったことがあとで判明。でもにゃんこケーキなんだと勝手に思っています。
いくじさん、本当にありがとうございました!!!

でもって、下記はイラストにあわせて小話を書かせていただきました。お返しになるかどうかは謎ですが〜。



心地よい気怠さに半ばうつらうつらしながらシーツに埋もれていると、浴室の方からドアの開く音が聞こえた。ユーリは三角形の猫科の耳をぴくりと立たせると、ごろりと身体ごと横に転がりながらそちらへ顔を向けた。
浴室からは、ちょうどフレンが髪を拭きながらでてくるところだった。こちらを見ているユーリに気がつくと、彼はにこりと空色の瞳を笑みに細めた。

「どうしたの? なんだか機嫌良さそうだけれど」
「ンなわけねえだろ。たいたい、久しぶりだからって好き勝手にされたこっちの身にもなって見ろ。体力バカが」

そう憎まれ口を叩きながらも、ユーリの長い尻尾はパタパタと機嫌良さそうに振られている。
実際、ひさしぶりの逢瀬に夢中になったのはユーリだって同じだ。抱き合って確かめ合って、幸福感で満腹になった。だからいま身体がとても怠くても、心は満足しきっている。
フレンはベッドに腰をおろすと、ユーリの髪を撫でてちょっと顔をしかめた。まだしっとりと濡れている髪は、随分と冷えてしまっている。
自分の髪を拭いていたタオルでユーリの髪をもう一度拭こうとしてくるフレンに、ユーリは小さく首を振って拒否の意をあらわすと、ちょっと甘えるように大きなその手に頬を擦りつけた。
かすかに苦笑する気配がして、フレンの大きな手がユーリの形のよい小さな頭を撫でる。その優しい感触に目を細めながら顎をあげると、喉をくすぐるように撫でられる。
もともと種族的に猫気質を十分に持ち合わせているユーリにとって、喉を撫でられるのはうっとりするほど気持ちがいい。まして大好きなフレンの手なら尚更だ。
本物の猫とは違うので喉は鳴らないが、そのかわりにすこしだけ甘えた声を出すと、からかうように指で顎をくすぐられる。
ユーリはフレン以外の相手には見せたことがないような甘えた表情になると、寝転がったままうっとりと目を閉じかけた。

「ユーリ、いい物をあげるからまだ寝ないで」
「ん〜?」

せっかく気持ちよくこのまま寝てしまおうと思ったのに、と不満げな目をむけると、子供をあやすような優しさで頭を撫でられる。その子供扱いがすこし勘に障って睨みつけたが、フレンはそれには気づかずベッドから離れた。
パタパタと今度は不機嫌さをあらわすように尻尾を振っていると、フレンは皿をもってベッドへ戻ってきた。

「はい、これ」

ちらりと不機嫌も露わな顔で見あげたユーリの目の前に、皿がさしだされる。それを見た途端、ユーリの黒くてすべすべな猫耳がぴこんと立ちあがった。

「これを見ていたら君を思い出しちゃってね。似ているだろ?」

皿の上にのっていたのは背の高いチョコレートケーキで、クリームとベリーが彩りよくのっている。フレンが似ていると言ったのは、そのベリーの配置が猫の顔のようだからだ。
半分に切られたイチゴは猫の耳のように左右対称に置かれ、そのすこし下あたりにラズベリーが目のように置かれている。

「……似てるかぁ?」
「似ているよ。ほら、耳みたいになっているだろう?」

首を傾げるユーリに、フレンはイチゴを指さす。

「だから君にあげるよ」
「自分で食うのに買ったんだろ?」
「いいんだよ。君を思って食べようと思っていたけれど、本物の君が来てくれたから」

僕はお腹いっぱいだからねとにこやかに笑うフレンの腕を、ユーリは照れ隠しに尻尾で叩いた。たしかに満腹になるほど貪られはしたが、改めて言われると気恥ずかしい。
でも、ケーキには罪はない。
ユーリは起きあがって皿を受け取ると、クリームを指で掬って口に運んだ。思っていたよりもさっぱりとした甘みが口の中にひろがり、思わず頬が緩む。
ケーキのまわりに飾られたフルーツをいくつか摘み、そしてそのまま手でケーキを掴んで口に入れる。しっとりとしたチョコレートケーキの生地と、その中に隠されていた甘酸っぱいベリーのソースが口の中で混ざりあう。甘さもしっとり感も、とてもユーリ好みのケーキだ。
パタパタと嬉しげに動く尻尾を見てフレンが相好を崩しているのが見えたが、ユーリは無視して無心にケーキを食べ続けた。

「あ、ユーリ」
「ん?」

名前を呼ばれてケーキを口の中に入れたままフレンの方をむくと、白い指がユーリの頬を撫でる。なんだろうと目を瞬かせると、フレンの指にクリームがついているのが見えた。

「……っ!」

礼を言おうとしたユーリは、途中で言葉を詰まらせた。
フレンがクリームのついた指を当たり前のように口に運び、ぺろりと舐めたのが見えたからだ。

「お、おまっ!」
「ん? なに?」

フレンはきょとんと目を丸くしながら、小さく首を傾げる。

「あ、もしかして自分で食べたかった?」
「……いや、なんでもねえ」

的外れなフレンの問いにユーリは小さく肩を落とすと、深いため息をついた。たぶんフレンにとってそれは当たり前のことで、なにか特別な意図があったわけではないだろう。きっとそうだ。
そう自分を納得させると、ユーリはもう一欠片ケーキを手で摘んだ。

しかし数日後、仲間たちの前で普通にフレンの食べかけのケーキを断りもなく皿から摘んだユーリは、同じようなため息をつかれることとなる。