クリスマスの夜に




 その日降り立った雪の町ケテルブルグは、いつものどこかのんびりとした、いかにも高級リゾート地らしい雰囲気とは違った空気に包まれていた。
 町の入り口の門をくぐったところで常とは違うあわただしくも浮き足だった雰囲気に、ルークたちは思わず足をとめた。
「なにかしら、騒がしいわね……」
 きゅっとティアは端正な横顔をしかめると、薄青い瞳を怪訝そうに細めた。
「なにかあったにしては、空気がぴりぴりしているわけではないようですし」
 蜂蜜色の頭をちいさく傾げながら、ナタリアがティアよりもいくらか緊張のすくない顔で相づちを打つ。
 しかしそんな彼女等の疑問も、町中に足を踏み入れたところですぐに払拭された。
「えっ!あれ、今日だったっけ?」
 ひときわ大きな声を上げたのはアニス。驚きにあわせてツインテールが跳ねあがる。そして、彼女ほどではないにしても、他の面々にもようやく納得がいったような表情が浮かぶ。
 たった一人と、その肩に乗る一匹を除いて。



「なあ、なんか今日は特別な日なのか?」
 おもわずといった感じで疑問を口にしたルークに、他の者たちの視線が集まる。
 その中で、薄い金色の髪をした青年だけが、しまったというように片手で顔を覆っていた。
「ガイ?」
 ルーク以外の者たちの視線が、今度は保護者兼元使用人の上に集まる。
「……悪い、おまえ知らなかったよな」
「え──っ!ルーク、クリスマスを知らないの?」
 まさかといわんばかりに振り返ったアニスに、ルークはまるで子供のようにむっと唇をへの字に曲げた。
「知らなくて悪かったな……」
「いえ、もともとはマルクトとダアト行事ですからね、キムラスカの人が詳しく知らなくても不思議はないんですよ」
 珍しくジェイドがフォローするような言葉を挟んでくる。
「……ですが、近年ではキムラスカでもそれなりに盛んと聞きましたが?」
 最後にはからかうような口調でそう付け足すと、彼はナタリアへ視線をやった。
「ええまあ、バチカルではそれなりに盛んですわね……」
「ダアトの影響がここ最近は強かったからな。それで自然と祝われるようになったわけだけど……」
「ファブレ公爵家では祝っていなかった、ということですね」
 歯切れ悪く続けたガイの言葉を引き取るようにして、ジェイドが薄く笑みを浮かべた。
「そういうこと。俺たち使用人が屋敷の外で祝ったり休暇をもらったりするのには、うるさくなかったんだけどな。だから、ルークが知らなくても仕方がないんだ」
「ふーん」
 アニスはちょっと微妙な表情で相づちをうつと、ちらりとジェイドの方へ視線を流した。
「あ─っ!そういや今ぐらいの時期に、屋敷のメイドたちがやたらとそわそわしてたよな」
「つまり、そういうことだったわけだな」
 突然思い出したように声を上げたルークに、ガイは苦笑を返した。そこから少し離れたところで、なぜかナタリアも微妙な表情を浮かべている。
「とにかくここで立ち止まっていても仕方がありませんから、大通りの方へ行ってみませんか?実際に見て説明を受けた方がわかりやすいでしょう」
 めずらしく優しげな言葉をかけてくるジェイドを不思議なものを見るような目で見返しながらも、好奇心の方が先に立ったのかルークは素直に頷いた。
 大通りにむかって歩いてゆくにつれ、家々の軒先に飾られた鮮やかな赤と緑の飾りに、ルークとミュウは珍しそうに目を輝かせながらきょろきょろとしている。それに、さりげなくナタリアが横について先に歩きはじめた。



「ガイ」
 その少し後ろを歩きながら、振り返りもせずにジェイドが声をかけてくる。
「あーまあ、あのお屋敷じゃあまりそういう外と接触を持つようなお祝いは積極的にはやらなかったんだよ…。ルークにあまり外に興味を持たれちゃ困るからな」
「……つまり、飼い殺しにするためにはできるだけ外の情報は少なく。というわけですね」
 その方が扱いやすいですから。さらりと続けられたジェイドの言葉に、アニスが顔をしかめる。
「はっきり言うと、そういうことだな。できるだけ好奇心をそぐように、疑問を感じないように育てられてたからな」
 普段はからかいの対象になる事柄も、こうやって改めて聞かされるとそれがどれだけ残酷なことだったのかを思いしらされる。
「そんじゃまあ、初クリスマスのルークに、このアニスちゃんがとびきりの楽しみ方を教えてあげますか!」
 ことさら明るい声をあげると、アニスは跳ねるような勢いで前を歩いている二人の方へ小走りに駆け寄っていった。その後ろ姿を見送るガイの瞳が優しく細められるのに、肩越しに振り返ったジェイドは気づいてちいさく笑みを浮かべた。



 いつもは雪に覆われている石造りの殺風景な建物たちが、今日ばかりは見違えるような赤と緑の色彩に飾られている。
 家々の扉には樅と柊で編んだリースが飾られ、軒先にも様々な飾りが趣向を凝らして飾られている。
「はー、さすがにケテルブルグだね。飾りも豪華……」
 感心したようにつぶやくアニスに、そうなのかとルークはちいさく首を傾げた。
「うん。普通はリースとかももうちょっとちいさくて可愛いのとか、軒先に柊の飾りだけとかが多いんだよ。さっすが高級リゾート地!」
「裕福な家が多いから、自然と飾り付けも競い合うようになるんですよ。もちろん、アニスが知っているようなシンプルな飾り付けの家も多いですが」
 ここの生まれであるジェイドがそう付け足す。
「さすがに本場ですと綺麗に飾り付けられていますのね。私も初めて見るようなものもありますし。素敵だと思いません?ルーク」
 自分もはじめてなのだということをさりげなく織り交ぜながら、にこりとナタリアがほほえむ。それにつられたようにそうだな、と笑顔を浮かべたルークにむけられる視線は優しい。
「ティア、ユリアシティはどんな感じなの?」
「わ、私もじつは初めて見るわ……」
 どんなものかは知っていたし、本でも見たことはあるのだけれど、と付け足してティアはかすかに顔を赤らめた。
「一応お祝いっぽいことはしていたけれど、飾り付けとか見るの初めてなの。……綺麗ね」
「なーんだ。じゃあルークだけじゃないんだね、本格的なクリスマスを見るのって」
 きゃらきゃらとアニスが笑い声をあげる。
「じゃあ良いタイミングだったかもねー、ここに来たのは。なんたって本場だもの!」
「手放しで喜ぶのは早いですよ、アニス。このシーズンは観光客が多いですからね、下手すると今日の宿はないかも知れないですよ」
「ええぇっ!」
「……と、いうわけですので、私はネフリーに今日の宿の手配を頼んできます。あなた方は町をまわってから知事邸までいらっしゃい。ガイ、お願いしますね」
「……あんた、さりげに逃げるつもりだな」
「心外ですね。寒さは年寄りに堪えるんですよ」
 まったくそんなことなどみじんも思っていないだろうと思われる顔でそう言うと、ジェイドはさっさと離れていった。
「んじゃ☆とりあえず屋台でも覗こうか」
 アニスはルークの手を取ると、目星をつけていたらしい屋台へと彼を引っ張って走り出した。
 それを苦笑混じりに見送りながら、ガイたちもそのあとを追った。




「メリークリスマス!」
 屋台の中の主人と目があった瞬間そう言葉をかけられて、ルークはきょとんと目を目を瞠った。
「メリークリスマス!おじさん、ちょっと見せてもらうね」
 アニスは主人に同じように言葉をかえすと、小さな陶器の小物がつまった箱の中をあさりはじめた。
 それで、ようやくそれが挨拶なのだと気がつくと、ルークはあわててちいさく会釈した。
 そんなルークに主人はにこりと笑いかけてから、突然なにかに気づいたように身を乗り出してルークの顔を眺めだした。
「な、ナンデスカ…」
「ご主人様ー、なんか言葉が変ですの」
 肩にしがみついたミュウが突っ込みを入れてくる。その制裁とばかりにチーグルを肩からはたき落としたルークは、突然後ろからなにかを頭に乗せられて、慌てて主人の方を振り返った。
「ふむ、やっぱり似合うな」
「え?な、なんだ?」
 驚きながら頭に手をやると、やわらかな布地の感触とかさかさとしたなにかが手に触れてくる。慌ててそれをとろうとするのを主人はやんわりと制すると、ルークの前に鏡を出してきた。
「……は?」
「いやいや、やっぱりよく似合っているよ。なにしろ同じ色だからな」
 楽しげに笑う主人の声を戸惑いと共に聞きながら、目の前の鏡に映る自分の姿におもわず瞬きする。
 朱色の頭の上には、ちいさな黒い帽子。そしてそのクラウンをとりまくようにして、赤い実をつけた柊と白い花が綺麗に飾り付けられていた。
「あんた、髪も目も見事なクリスマスカラーだからな。その帽子はあげるよ。めでたいその色に免じてな」
「えっ!で、でも」
「温かくて良いだろ、その帽子。似合う奴にかぶってもらえた方がものも幸せってもんだよ」
「ええー!ルークってはズルイ!」
 一緒にいたアニスが声を上げるのに、ふむと主人は顎に手をやった。
「そこのお兄ちゃんに免じてあんたにも割引してやるよ。クリスマスだからな」
「やった☆」
 手を挙げて喜びをしめしたアニスをあっけにとられて見ているルークの後ろから、くくっと笑い声があがる。
「ガイっ!」
 その声だけで相手がわかり、ルークは振り向きざまこちらを見て笑っているガイを睨み付けた。
「たしかに言われてみればお前、見事にクリスマスカラーだな。赤い髪に碧の目だもんな」
「……そういえばそうね」
「あら、じゃあ叔父様や父上もそうなるのかしら?」  口々に勝手なことを言う仲間たちに、ルークは子供のように口をへの字に曲げた。
「んだよ、勝手なこと言ってんじゃねえよ!」
「いいじゃないか、今日ばっかりはきっと得するぞ。なにしろお祝いの色だからな」
 笑いながらガイはルークの手にあった帽子を取ると、ぽんと頭の上に乗せなおした。
「寒いんだし、ありがたくもらっておけ」
「う……」
 たしかに耳の上あたりまで覆ってくれる帽子は柔らかくて、温かい。
「…ありがとうございます」
 くるりと店主に向きなおってぺこりと頭を下げると、にこにこと嬉しそうに笑いかえされた。それを不思議そうに見つめていると、後ろにいたガイがそっと囁いてきた。
「喜んであげるのも、相手を幸せにすることの一つなんだよ」
 だから、素直に喜んでおけ。
 そう笑うガイにちいさく頷きながらも、ルークはなんとなく納得できない顔で店の前を離れた。



「いやー、ルーク様々だわ」
 そう呟いたアニス以下それぞれに戦利品を手にした面々のほっこりと満足そうな顔の中で、ただ一人ルークだけが納得のいかない顔でむすっと唇を引き結んでいた。
 結局、行く先々でルークの顔を見た店主たちが笑いながらサービスしてくれたおかげで、彼だけではなく同行しているガイたちもその恩恵を受けていた。
 ルークの見事な赤い髪はたしかにマルクトでは珍しいものだったし、そこに碧色の瞳という取り合わせは町を飾る祝いの色とまったく同じ組み合わせなこともあって、縁起物だと行く先々で喜ばれたのだ。
『坊や一人でクリスマスツリーだわね』
 と、最後に人の良さそうな老婆に言われたときは、笑いながらもルークの口元が引きつっていたのをガイは気がついていた。
 最初にもらったクリスマスの飾り付きの帽子をちょこんとかぶっている姿がさらにそれを助長させているのだが、もちろんガイをはじめ全員それを指摘してやるつもりはない。
 せっかくなのだから、とことん楽しいクリスマスを過ごさせてやりたい。それが、全員の一致した気持ちなのだ。
「ほら、そんな顔すんなよ」
 軽く頬をつついてやると、上目遣いににらまれる。
「そろそろネフリーさんとこに行かないとまずいだろ」
 だからその顔を直せと言うと、しぶしぶといった感じでルークは頷いた。
「しっかし凄い人だよな……。本当に宿とれんのかな」
「大丈夫だろ、たぶん」
 というか、おそらく絶対に平気なのだろうとガイは確信している。
 ジェイドは宿がないかも知れないと言っていたが、おそらくここに来る前にすでに宿の手配をネフリーに頼んでいたのに違いない。
 そして、彼がそれなのにあえて自分たちから離れて行動しているのは、おそらくルークを驚かせるためのなにかを手配しているからなのだろう。たぶん、彼は素知らぬふりをするだろうけれど。
 必死に歩きはじめたこの子供に、誰もが隙あれば手を伸ばしたいと思っている。
 だけど、人の好意をまっすぐ受け止めることに一歩引くようになってしまった彼は、まだそれらをおそるおそるとしか受け取らない。
 今だって、もらった帽子のことを気にしてツバを引っ張っている。
 自分以外の誰かも必要としているものならためらいなく受け取るくせに、自分だけのものを受け取るのは気になるのだろう。
 それでも、この浮き足だった雰囲気は楽しいのか、どこかそわそわもしている。
 だったら思い切り楽しめば良いのにと思っていると、あらたな店をみつけたらしいアニスが来てルークの手を引いて駆けだしていった。
 それに文句を言いつつも、ルークの顔はどこか子供っぽい楽しさを見せている。
「子供のことは、子供が一番わかりやすいのかねえ」
 ほんの少しだけそれに寂しさを覚えながら、思い出したようにこちらを振り返って早く来いというように手を振るルークに苦笑しながら歩き出す。
 アニスはまたルークをだしにして、買い物を値切ろうとしているらしい。それを早く助けろと、目でルークが訴えている。
 ガイは苦笑しながら二人がいる屋台の方へと、足をはやめたのだった。




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↓ここから12/25以降に付け足した部分があります。





 ホテルの入り口の扉を開くと、凍るように冷たい夜の空気が頬を撫でた。
 それに一度ちいさく体を震わせると、ルークはなんとなくそろそろとした動きで外に出た。
 夕方に一度降りはじめた雪は、いまはやんでいるようだった。
 踏み出した足の下の雪が、さくりと小さな音をたてて崩れる。
 それはまるで、夕食の時に食べたクリスマスプディングの上にかけられていた糖衣の歯触りに似ているような気がした。
 頭には、もらったばかりの黒い帽子。その中に髪の毛を無理矢理入れているせいか、首筋が冷たい。
 やはりマフラーかマントを持ってくるべきだっただろうかと思いながらも、ルークは階段をおりて道に降り立った。
 雪が降った後のせいか、通りには人影はなかった。
 ぼんやりと外灯の琥珀飴のような色の光に照らし出された雪は、なぜかやわらかくて温かそうに見える。
 


 ネフリーのところに行くと、彼女は笑顔でルークたちを迎えてくれた。
 ホテルは手配してあるからとつげた後で、彼女はルークの顔を見てちょっと笑ってから、『本当にクリスマスね』と嬉しそうに言った。
 それにはルークは色々と異論があったが、あまりにさわやかに笑われてしまっては何も言えなかった。それに、彼女が自分を見る目はどこかくすぐったくて。そしてそれは、今日一日この町の人達が自分にむけてきた瞳でもあった。
 なにか愛しいものを見るような、そんな瞳。
 それはやわらかくて温かくて、いま雪の上に落ちている外灯の明かりみたいに明るかった。
 だけどそういう目で見つめられるたびに、くすぐったくて温かな気持ちになると同時に、すっと背筋を撫でられるような冷たい感情がこみ上げてくる。
 だけど、それがなぜなのかわからなかった。
 


 ホテルのレストランに行くと、なぜかすでに席が用意されていた。
 ネフリーの采配だとそっけなくジェイドは言っていたが、なんとなく違うのだとわかっていた。
 食事はどれもとても美味しく、そしてみんな何が可笑しいのかわからないくらいに笑って食べて飲んだ。
 ちょっぴりお酒をもらおうとしてガイに怒られたり、用意された紅茶が特別に作られたフレーバーで好みの味だったり、一日の締めくくりとしては最高の時間で。
 騒ぎすぎたせいかベッドに入ったときはすぐに眠れたのに、なぜかこんな時間になってぽっかりと目が覚めてしまった。


 目が覚めると、急に一人きりの部屋がひろく感じられた。
 先ほどまであれほど騒いでいたのに、まるで眠っているあいだに置き去りにされてしまったような、そんな不安感が急に襲ってきた。
 もちろんそんなことが起こるはずがないことは、わかっている。
 しかしルークはすでにそれがなによりも恐ろしいことなのだと、知っている。
 今夜はあいにくと、ミュウもいない。
 いつもなら一人部屋だとのびのびと眠れるはずなのに、こうやってベッドにもぐり込んでいるあいだにも、部屋の隅にある闇から不安が手を伸ばしてくるような気がする。
(……ガイのところへ行こうか)
 おそらく彼は、急に訪ねていっても笑って何も聞かずに招き入れてくれるだろう。
 甘えているという自覚はあるが、それはとても魅力的な考えだった。
 しかしルークはすぐに思いなおすと、頭の上までブランケットを引き上げてもぐり込んだ。そうして、先ほどまでつかんでいたはずの眠りの裾をさがすが、そうやって焦れば焦るほど、眠りは遠ざかってゆく。
 しばらくのあいだベッドの中で無駄な努力を重ねていたルークは、ついにあきらめて起き上がると、ベッドから降りた。
 そしてそのままぼんやりと外に出てきてしまったのだが、よく考えなくても眠れないだけでこんな寒い中を外に出てくる必要はない。
 ただなんとなく、なにかに呼ばれているような気がしたのだ。
「……変なの」
 ルークはちいさく首を傾げてそう呟くと、そのよばれている感覚に従うように公園への階段を上っていった。




 いつもは子供たちが雪合戦で駆け回っている公園は、街灯の明かりの中にしんと浮かび上がっていた。
 雪には音を消す性質があるのだとジェイドが言っていたが、たしかにこの静けさはそのせいなのかもしれない。
 さくさくと足の下で崩れる雪の感触をぼんやりと楽しみながら歩いていたルークは、公園の片隅に見慣れない像が建っていることに気がついた。
 それは、まるで木々のあいだに隠れるようにしてそこに立っていた。
 雪明かりが反射して青白い光が見えなければ、見過ごしていただろう。
 木立のあいだの細い道を通って近くまで行くと、それは羽をたたんだ一対の天使の像だった。そして、その二人の天使がかこむようにして立つ足場には、小さな水場があった。
「冷てっ……!」
 おもわずその青さに引き込まれるようにして水面に触れると、まるで薄い刃で切られたような痛みが走る。しかしその清廉な水の感触は、触れた場所からなにか違う力が体内に注ぎ込まれたような感覚を感じさせた。
「あ……っ」
 何気なく自分の手に視線を落としたルークは、自分の指が光っていることに気づいて思わず目を瞠った。
 それはやわらかな雪明かりにも似た色をしていて、見つめているとその色に引き込まれそうな気持ちになる。
 自然と指が祈りの形に組まれる。
 そっと目を伏せると、なにか不思議な力が体の中を駆け抜けてゆくのがわかった。
 やがてそれらは組んだ指に集まってくると、小さな光の粒となってはじけ飛んだのが目を閉じたままでも感じられた。



→アッシュ編へ


→ガイ編へ




ここから分岐しますので、お好みの方をどうぞ!
そしてルークの帽子ですが、Dグレのアレンの帽子を思い出していただけると…。
千年公ぽい帽子なのはわかってますが、あれはできれば想像しないでいただけると…!